「宅配」に特化した事業展開

AZヤマヒロは2017年の4月に創業した、山田運送グループでもいちばん若い会社です。ヤマヒロ運輸の宅配事業部から独立し、宅配に特化している会社として立ち上げました。
社名の「AZヤマヒロ」の「AZ(あず)」は、アルファベットの最初と最後の文字からとりました。僕らの仕事は、お客様の荷物の預かる最初のところから、途中いろいろな人の手を経て、最後にお届けするところまでをやっている、その意味を込めています。

会社のいちばんの特徴は「宅配」に特化していること。
たとえば、トラックの運送だと決められた時間までに指定場所に運ぶということになりますが、宅配は時間内に決められた個数を届けないといけない、機動力と臨機応変な対応が非常に大事になる仕事です。
ノウハウもあるし、素人ではなかなできないと思われるかもしれませんが、僕は誰にでもできる仕事だとよく言っています。

たとえば、通勤で自宅から会社へ行く間にナビを使う人はほぼいませんよね。僕らがやってるのは、その目的地が自宅なのかお客様の家なのかの違いだけ。繰り返しの行動で頭に入っている場所が、僕らの場合は100件、200件ある、ということなんです。
まあ、方向音痴でない程度の適性は必要ですが、繰り返すことで誰でも地図が頭の中に入ってくるようになります。

それぞれのペースで誰でも成長できる

エリアは細かくコースに分かれていて、だいたい小学校の学区ぐらいの広さです。1人で2つか3つのコースを担当して走っているので、何かあった場合は誰かがフォローに入れる体制になっています。

誰にでもできるけれど、最初に覚えるまでの期間は人によって様々。勘のいい人だと1ヶ月ほどでパパッと覚えてしまうし、逆に、なかなか覚えられない人もいる。
以前、50代半ばで始めて、まじめで一生懸命な方がいたんです。まわりも色々アドバイスして、すっごく一生懸命やってるんだけれど、なかなか伸びなかったんですね。それが、ちょうど1年ぐらいたって現場でその方と会った時、「小西さーん!これ見てー」って請求書を見せてくれて「食えるようになりましたーっ」って。それを見て、ようがんばったな、耐えたなーって。
その時は僕も、もう本当に嬉しかったですね。

地域密着だからこそ味わえる面白さ

僕らは個人個人が全員営業マンだし、お客様とコミュニケーションをとって信頼関係ができると、たとえば置き配の場所を教えてもらえて再配達が減るというように、仕事でもメリットがうまれる。
あとは、地域にすごく密着しているからこそ面白いし、楽しいことも多いんです。
夏の暑くてしんどい日に、いつも冷たいお茶をだしてくれるお母さんとか、お菓子をいただくこともしょっちゅう。鶏を飼っているお宅で、生卵をいただいたこともありましたね。

昔の団地なんかでは、皆さん夏場は玄関を開けていたりする。配達に行って玄関で倒れているお母さんを見つけて、声をかけたけど返事がない、そこですぐに救急車を呼ぶということが何度もありました。後になって、遠方に住んでいた娘さん息子さんから、「ゆうパックを配達しているお兄ちゃんが助けてくれたんや、ありがとう」っていう電話をもらうことがあって。それはもう、嬉しかった。

誰かの役に立つことができた喜びを感じられる、そういうのが、この仕事のいいところですね。

人情味のあふれる現場

宅配の仕事は、運送の仕事の中でも離職率はかなり高いと思います。やはり、拘束時間の問題など、課題はたくさんありますし。ただ、当社は、業界の中では離職率は低い方だと思います。

面白いのが、いったん辞めた人が帰ってくるということがあるんですね。人間は失敗するものだから、僕は、いいよって迎え入れています。ただし、出たり入ったりできるコンビニじゃないんだから、2回目はないよとは伝えますけどね。

あとは、労働時間がどうしても長くなる仕事なので、60代半ばを過ぎて体力的にキツくなって辞める方も多い。その場合、かわりの人を育ててから引退してもらっています。

じつは、その引退したおっちゃんが、何かあったときに、弟子のためにヒョイと登場してくれるんですよ。
たとえば、僕も配達を教えてもらった師匠がいるんですけど、誰かインフルエンザになって代わりの人がどうしても見つからない、どうしようとなった時に、師匠を思い出して電話してみる。
「どうしたんや」「ごめん、誰々が倒れてちょっと穴があいてんのやんか」「ほなちょっと待っとけ、行くから」って来てくれる。言われたらしゃーないやんけ、とか言って、嬉しそうなんです。
現場にはそういう人情味がありますね。

嘘をつくな、大きく見せるな

人間ってカッコつけて大きく見せてしまうじゃないですか。でも、それをすると失敗することが多いなと思うんです。
僕はまず、嘘をつくなって良く言います。たとえば、1日50個の荷物しか配達できない、まだ能力が追いついていない人が、いや100個できますよって嘘をついたって、自分がしんどいだけなんです。

営業も同じ。お客様に対して「ここまではできます。ここからここまでは微妙です。でも、これ以上になると、たぶんうちではしんどいと思います」と、はっきり言う。
営業として会社の規模やキャパシティーをきっちり把握したうえで、お客様に正直なところをお話して決して過大なことは言わない。そして、努力は最大限にする。それが、誠実ということに繋がると思っているんです。

現場で配達をしてくれるスタッフにも、嘘はつかなくてもいいし、いいかっこもしなくていい。思ってることを素直に言ってほしいと伝えています。
いろんな相談にものるし、一緒にがんばりたいという思いが伝われば、しんどくてもその人は辞めないと思っています。請求書を見せてくれたおっちゃんも、こちらの思いや誠実さが伝わったから、1年頑張ってくれたと思うんです。そこを伝えるのが、一番大事なんじゃないかと思います。

自分次第で収入アップができる「やりがい」

仕事を覚える期間は人によってばらばら。覚えてもらったら、1個あたりの計算でやった分だけ稼げるようになります。
最初は数をこなせないので、拘束時間が長いと時給がとんでもなく安くなってしまう。だから、ある程度こなせるまでは、1日1万円を保証しています。僕が入社した頃は最長で2ヶ月でしたが、宅配の事業部を任されてからは、最長3ヶ月まで保証するようにしました。

数がこなせるようになれば、逆に1日で2万円、3万円以上稼ぐ人もいて、そこを目指して僕らも育てていくんです。
最初は教える子を横に乗せて一緒に配達にまわります。僕が現場にいた時は、だいたい2食プラス昼寝休憩を入れて回っていたんですが、乗っていても暇だから、伝票を整理して数えてもらうんです。それで、枚数に単価をかけて今日は売り上げ2万円超えたというように、毎日見せてあげる。そうすると、最初自信がなかった子も「そんなに稼げるんですかー」ってなってくる。「だって見てたやろー、今日俺昼寝してたやんか。お前にもできるんちゃう、みんな単価一緒やから」って。

あとは、ベースとなることは師匠のドライバーがきっちり教えてくれる。たとえば、道順はこうやったら回りやすいとか。配り方、荷物の積み方とか。センスの違いはありますけど、毎日のことなので、できるようになるんです。

免許取りたての子でも、30代40代バリバリの人でも、70代のおじいちゃんでも、ぼくらの条件は全員一緒。19歳の免許とりたてで10万円しか稼げなかった子が1年先には50万稼いでいたり、70歳の人が普通に50万以上毎月稼いでいるということがあるのが、ぼくらの業界なんですね。
そこがやりがいでもあり、すごく面白いところですよね。

やりがいと安心を両立させるためにできること

ドライバーさんは、たいていの方が業務委託という形で契約して仕事をしています。なぜなら、今の法律を守っていると、稼げていたものが時間を区切られることで稼げなくなってしまう。この仕事の魅力は「稼げる」ところなので、そこを維持するためには業務委託で一人親方になってもらうしかないんです。

だから、個人事業主としての不安をできるだけ減らせるよう、当社では退職金制度を作っています。これは、僕らの規模の個配の会社ではかなり珍しいと思います。

あとは、労災もかけてもらいます。以前当社で実際にあったことなんですが、当て逃げされて、車のミラーで肋骨が折れてしまった方がいて。痛くて荷物が持てず給料がでないのに、労災をおろしてあげることもできなかったんです。それを教訓として、業務委託のドライバーさんも労災をちゃんと確保できるしくみに変えました。

会社で面倒な手続きは全部やりますし、確定申告などもお手伝いできますし、とにかく、いろんな相談に乗ります。家を買いたいという人もいれば、とにかくいい給料を持って帰りたいという人もいる。その人の思いをどれだけサポートしてあげられるのか、考えるのが僕らの役目。

働いている人は業務委託だったり社員だったり、形態はいろいろですが、AZヤマヒロという会社で働く家族です。
家族のことを気遣うのは当たり前、時には子どもが悪いことしたら、親なら本気で叱ることもある。でも、憎くて怒るんじゃなく、かわいいから叱るんだということがきちんと伝わっていれば、わかってもらえると思っています。

AZヤマヒロの今後の展望

まずは、大阪府下のすべてで、配送に携わっていくこと。僕たちが配っていない地域をゼロにしたいというのが、一つの目標です。
さらに、それを拠点に近畿、中部、関東というように支店や支社を構えていくのが、最終的な目標ですね。

今は200台体制ですが、来春までには300台の体制に伸ばしていく予定です。
ありがたいことに仕事はいくらでも用意できて、人を待っているという状況です。だから、一緒に僕らと仕事がしたいという人がいれば、ぜひ、どんどん入ってきていただきたいと思います。

さらに、いま社内で特攻隊のようなチームを編成しようとしていて、いきなり現場に行っても1日100個をこなせる社員をチームにしようと考えています。
たとえば、新しい仕事を取った時、事前の準備だけでは対応できないような場合フォローする。急病やトラブルであいた穴をサポートする。さらに本来の特攻という意味で、ここと決まった時にすぐに行けるような、足の速い対応ができる。
お客様の要望に応えられるスピードを僕ら自身が上げていかないと、これからの時代にどんどん取り残されていくと思っています。

会社を大きくしていくのに、たとえば規模の大きな会社さんだと下請け業者を使っているというところが多いんですね。でも基本的にそういうことはしたくない。下請けさんにはそこの社長さんの思惑や、人間だから欲もあるでしょう。そういうところには、なるだけ関わったりせずに、自分の思いをキチッと伝えてやっていきたいから。

山田運送のグループ会社の経営陣は、もとは自分の後輩だったりして非常に仲がいい。グループの社長みんなが思いを同じくしているところがあるので、どういう形でやっていくかというところは連携をとりながら、お互いに成長を続けていきたいと思っています。